[単行本] アサウラ ≫ ベン・トー―サバの味噌煮290円

 面白かった。
 ……で、ちょっと趣向を変えたレビューを。
以前にもちょっと書いたけど俺は「レビューを書くことの政治性・外部的効果」についてそれなりには自覚的なので、読んだ人読んだ人読んだ人が「面白い」と絶賛している1 ような作品について、同じような角度で同じように「面白かった」と書く気にはなれないのよね)

※以下、「面白い」ということを前提にして語るので、「未読」及び「読んだが別に」な人は、読んでから、または心を入れ替えてから、読むように。

Q.何故、面白いのか?
A.熱いから。

 ……では、回答になってないですね。このように問い直さなければいけない。

Q.では何故、熱いのだ?

 俺の理解では割と単純で、「意志」がかなり単純な形で扱われ/問われているからです。

 つまりつまりつまり、作中では「夜も8時を過ぎて3割引ラベルの上に半額ラベルが張られようとしているスーパーを舞台に、半額弁当の争奪戦」が繰り広げられる訳ですけど、ファンタジーな世界を題材にした金銀財宝の争奪戦という話でも(話の構造は)成立するし、多分つまらなくはないのですよ。面白くないだけで。2

 最終的には不換紙幣だ兌換紙幣だってな話にまで行き着くのですが、「価値がある」ってのは要するに「価値があると私が決めた」ってことなのですよね。
 で、それを(強烈に)表現するには、「そもそもそれ自体が一般的に価値を認められているようなもの」ではいけない訳です。「価値がない(とされている)ものに価値を見出すこと」こそがここ3 での「価値」なので。

 で争奪戦になる訳ですけど、それは要するに「その場に居るのはどいつもこいつも自発的に争奪戦に乗った奴ばかり」ってことで、「それ自体に価値がないものに、勝手に価値を見出した人が沢山居る」ということであって、換言すると意思と意思とのガチンコな訳ですよ。
 そりゃもうあーた、(ノリが合いさえすれば)熱くならないわけがない。

 そして一方で、素手で銃弾弾き返したり、というレベルでの無茶さがない。無茶はやるけど「リアリティを完全に放棄」する方向にはいっていない。(戦闘シーンは無茶だろう、とも云えますが、俺的には「1.聖域なのでリアリティの範疇外」「2.脳内麻薬のせいで感覚がおかしくなっているが、外から見るとそれほどでもない(かも)」という理由で許容範囲)

 過剰さが暴走する一方で、「一歩踏み外した先で二歩目は踏み外してない」というバランス感覚、どこまで狙ってやったんだかは不明ですが、ある種の巧さは確実にあると思います。

 あ、作品本体の評価には影響しないけど、ウルトラジャンプとかジャンプSQとか、集英社ネタはちょっとウザかったな。
「びゃあうまいぃぃ」とか、ネタのセグメント絞りすぎだし。
 ……いや、些細な点だけど一応。

ベン・トー サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫)

著者/訳者:アサウラ

出版社:集英社( 2008-02-22 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 294 ページ )

ISBN-10 : 4086304058

ISBN-13 : 9784086304054


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     何れも強烈な絶賛(という意味では一人分読めば他も概ね似たような内容である)
     なお、読む直接のきっかけとなったのはFMPのコモリケイ氏

    []

  2. 読んだ人は判ると思いますが作中の某シーンと二重写しに捉えています。 []
  3. 一回性とかそういう単語が脳を過ぎるw []

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