待てコラ。
つい先日「クロック城」「瑠璃城」についてまとめて総括しましたが、……という流れで本作を読んだら、性質の悪い詐欺にあった気分です。
「騙された」けれども、全然悔しくないし、肯定的に評価する余地もないです。
……以下、本作の内容に触れつつ解説。
普段はネタバレしても楽しめるように配慮しつつネタを割るようにしていますが、本作の場合はちょっとでもネタを割ると一気に楽しめなくなるので、未読の方は注意してください。
「北山猛邦といえば物理トリック」じゃねーの? 叙述の一発ネタとかありえんわマジで。
しかも巧拙で云えば下手だしな。……いや、「巧いけど、巧いだけで全然面白くない」、か。
「『アリス・ミラー城』にあるという『アリス・ミラー』を探すために探偵が集められ、ミラーの捜索が開始されたが、一人また一人と探偵が何者かに襲われ殺されていった。犯人は誰だ?」的な古典的なスタイルを踏襲しています。
……全て捨てネタ、ミスリードです。
例えば有栖川有栖の江神シリーズを筆頭とした「理詰め」のミステリでは、「そんな要素からそんな論理展開が!」という点が驚きのポイントになる訳ですが、北山作品の場合、(これまでは)世界観とロジックが明らかに乖離していて、その食い合わせの悪さが(ミステリ的にではなくお話的な)面白さに繋がっていたと思うのですね。
で本作、作品の世界観もミステリ的なネタも綺麗に一つの方向を指していて1 、「綺麗に纏めた」ことを以って評価するなら、控えめに表現して「巧い」とは思います。
巧いだけ。
「全てをミステリのためにデザインした」ために、ミステリ的な欠点がダイレクトに作品の欠点になってしまっています。(「お話」の方でのフォローの余地がありません)
じゃ「ミステリ的な欠点」って何、というと、「綺麗にやりすぎ」ということです。
一言だけ触れましたが、ネタは叙述です。
叙述ということは、ネタが「正しく」成立するためには、伏線を色々と張ることはもちろんですが、「その伏線を張ることによって読者に違和感を持たせる」必要があるのですよ。
「あれ、何か今の記述おかしくね?」「この記述とあの記述、食い違ってね?」といった違和感が、ある点を境に一気に解消する、というようなスタイルが、叙述モノとしては目指すべき形でしょう。(と俺は思っています)
本作、最後の最後まで、違和感が全くありません。
(強いて云うなら「登場人物一覧表」がないことが最大の違和感ポイントでしたか)
色々と伏線は張ってあるようですが(末尾のリンク参照)、どれも「違和感」を持つまでには到りません。「アンフェアじゃないよ、伏線はちゃんと張ってありますよ」のエクスキューズ以上には評価できない。そんな状態で「意外な真相」が明らかにされても、「で?」以上には反応のしようがない。
そしてこちらが致命的ですが、「真犯人が、誰からも一度たりとも疑われていない」点です。
このシチュエーションなら、死体が一つ出てくるたびに生存者全員を疑うのは自然(というより「疑わないのは不自然」)ですし、「『真犯人』を疑うシーンは視点切り替えの都合でカットした」等というなら恣意的にすぎるというものです。
事件発生のシーンをカットしたりアリバイ確認のシーンをカットしたりしたら話が成立しないでしょう? 本作のネタはつまりそういうことです。
……正直、作者や作品より、この作者に期待していた自分にガッカリです。
■参考
- 『アリス・ミラー城』殺人事件/ネタバレ感想
- http://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/book/chess-end.html
- taipeimonochrome ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂 ? ボンクラのキワモノマニアはいかにして「『アリス・ミラー城』殺人事件」の仕掛けに完敗したのか(藤岡真先生への返答)
- http://blog.taipeimonochrome.ddo.jp/wp/markyu/index.php?p=1080
- どちらのリンクも、未読者には(ネタバレ以前の問題で)そもそも理解できないと思います。前者のリンクが特に丁寧。
著者/訳者:北山 猛邦
出版社:講談社( 2008-10-15 )
定価:¥ 820
Amazon価格:¥ 820
文庫 ( 480 ページ )
ISBN-10 : 4062761467
ISBN-13 : 9784062761468
- 「ミステリ的なネタのために全てがデザインされている」と表現したほうが適切か。 [↩]



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