ここでいう「萌え4コマ」とは、「まんがタイムきらら各誌に掲載されている作品に多く共通してみられる特徴をもった作品」ぐらいに解釈してください。
というのは、ここで考慮するのは「作品の質」であり、それは「現にどう呼ばれているか」、あるいは「4コマ形式であるか」、とはイコールではないからです。
<2009>としているのは、以下で語る内容がまんがタイムきらら創刊当初から見られた傾向「ではない」からです。
また、傾向の話なので、「世間では萌え4コマと呼ばれているが、以下の内容に合致しない」という作品も多数あります。
「萌え4コマ」の特徴を以下に列挙します。
・4コマ形式であることが多い
・「キャラの記号性」が弱い
・一話完結のような性質がある
・作品全体でのストーリー性は弱い
(「キャラの記号性が弱い」は異論がありそうなので後述)
「4コマ形式であることが多い」は形式の話なので、これも質に関して読み替えるとこうなります。
・構図がやや制限される(遠景が極端に少なく、バストアップが多い)
・バストアップが増えることと関連して、キャラ間の会話が多い(単位ページあたりのセリフが多い)
上記を総合すると「ミクロなエピソードに多くのコマ/セリフが割かれるが、それは話の進行には関与せず、ストーリー的な内容は薄い」のようになります。
云い換えましょう、「ストーリーは薄いがキャラ間のコミュニケーションは濃い」1 ということです。
で、筆者はこれを「キャラクターに萌えたい」という要求に最適化した結果である、と評価します。
何を念頭にそう評価するか
まず抑えておくべきは、「属性のデータベース的な組み合わせ」(を消費する読者像)からは
・上記「萌え4コマ」の傾向
・それが好評であること
が説明できない、ということです。
他方、ストーリー面で「一話完結的」でありながら「全体を通してのストーリーが弱い」という点も示唆的です。
これに「ストーリーは薄いがキャラ間のコミュニケーションは濃い」を加味して、
「キャラ間でコミュニケーションしていればよく、その内容は問わない」
という態度を見て取ることは難しくありません。
つまり
・萌えの対象(読者が「萌え」を見出す対象)が、「キャラ個体」から「キャラ間の関係」にシフトしている
・「萌え4コマ」は「関係萌え」に(意図的にか結果的にかはともかく)最適化している/しつつある
と解釈できる、ということです。
直接関係ありませんが、殆どバズワード化してしまった感のある「ツンデレ」も、単体では成立しない属性だという点は指摘しておいても良いでしょう。2
冒頭の「キャラの記号性が弱い」について、ここで補足しておきます。
初期きららでは「属性一点突破」のキャラが非常に多かったのが、近年はそのようなキャラはめっきり減っている、ということです。3
理由ははっきりとは判りませんが、「記号」が突出すると他のキャラと絡ませにくくなり、それが「キャラの関係」を描く際にマイナスに働く、ということかと推測しています。4
2009年現在で「テンプレート的なもの」を見出すなら、それは「キャラ」ではなく「エピソード」の側になるでしょう。(○○ネタが作品AとBで被ってる、というのはよくある話です)
「萌え4コマ」にとっての「ストーリー」
そもそも「ストーリー」とはなんだろう、ということを問題にしてみます。
普通の漫画での「ストーリー」は、「『達成すべき目標・達成するまでの過程』を描いたもの」だと云えるでしょう。「作品全体」「エピソードごと」等の区切りはあるにせよ、明示的・黙示的な「目標」が「あらかじめ」存在しています。
「萌え4コマ」では、そのような意味での「目標」は基本的には存在しません。
という意味で、「内容のないエピソードの積み重ね」という評価はそう外したものではありません。
他方、既に見てきたように、(特に「単位ページあたりの」)「キャラ間のコミュニケーション」は、濃いです。
強弁してしまうなら、「キャラ間のコミュニケーション(を描くこと)」が結果的にストーリー(と呼ばれるもの)になる、ということです。
読者像を想定するとイメージし易いです。
普通の漫画では「目的は達成できるのか」という点に読者の興味が置かれます。
一方、「萌え4コマ」では、「どんなシチュエーションや仕草で萌えられるか」という点に読者の興味が置かれます。
(普通の漫画的な意味での)「ストーリーの良さ」に意味が無いとは云いませんが、それは目的として予め設定されるものではなく、キャラを置き去りにした「ストーリーの良さ」はありえない、ということです。
「ひだまりスケッチ」「けいおん!」等の学園モノでは時間の流れがあることも多いですが、これとて「新しいシチュエーションを作るため」として理解してしまって不都合はありません。(最たるものは「ふおんコネクト!」の「二周目」でしょう)
念のため補足
筆者はそのような傾向にネガティブな評価は与えていません。
「ストーリーを蔑ろにしてでもキャラを立てる」というのは漫画の作り方としては伝統的なもので、ここで個別に問題視すべき話ではないからです。
暴論気味ですがジャンプ黄金期と比較するなら、「ストーリーを蔑ろにしてキャラを立てたらストーリーが破綻した(が気にしない」のがジャンプ、「ストーリーを蔑ろにしてキャラを立てたらストーリーが消えてなくなった(が気にしない」のが「萌え4コマ」、という整理をしても良いでしょう。
(興味がある方は、本稿の指摘を念頭に「『ジャンプ黄金期』の作家&編集インタビュー」を読んでみてください)
とりあえずのまとめ
<2009年の理解として>
・「萌え4コマ」は「萌え」ありき
・「萌え」は「キャラ個人」より「キャラ間」に見出される
・「ストーリー蔑ろ」は今に始まったことではない。(「蔑ろにするやり方」は新しいかもしれない)
更に検討が必要なこと
・上記の理解は「萌え」から離れて(漫画あるいはフィクション一般論として)成立するか?5
・「萌え」と「百合」(≒男排除)の関係は、どこまでが必然か?
まだ何も考えていませんが、それぞれ考慮に値する材料だと思っています。
参考として文中に挙げた作品のリンクを貼っておきますが、これらの作品を読むよりもきららMAX3ヶ月分の方が資料的な価値は高い(から読め)、と思います。(現在、きららMAXはAmazonで取り扱いがありません)
著者/訳者:ざら
出版社:芳文社( 2007-03-27 )
定価:¥ 860
Amazon価格:¥ 860
コミック ( 120 ページ )
ISBN-10 : 4832276204
ISBN-13 : 9784832276208
著者/訳者:かきふらい
出版社:芳文社( 2008-04-26 )
定価:¥ 860
Amazon価格:¥ 860
コミック ( 120 ページ )
ISBN-10 : 483227693X
ISBN-13 : 9784832276932
著者/訳者:蒼樹 うめ
出版社:芳文社( 2005-10-27 )
定価:¥ 860
Amazon価格:¥ 860
コミック ( 120 ページ )
ISBN-10 : 4832275496
ISBN-13 : 9784832275492
著者/訳者:nino
出版社:芳文社( 2008-02-27 )
定価:¥ 860
Amazon価格:¥ 860
コミック ( ページ )
ISBN-10 : 4832276832
ISBN-13 : 9784832276833







>きららMAX3ヶ月分の方が資料的な価値は高い(から読め)
きららって4誌あって普段読まない人間からするとどれも似たような雑誌に感じてしまうんですがきららMAXは別格なんでしょうか?
どれが一軍どれが二軍、のような明確な区別はないです。
ポイントは「3誌全部読む」でなく「1誌を3ヶ月」ということで、何か気になる作品が既にあるなら、
その作品の掲載誌を3ヶ月追う、ということで全く問題ないと思います。
いや、面白かったです。
>「4コマ形式であることが多い」は形式の話なので、これも質に関して読み替えるとこうなります。
>・構図がやや制限される(遠景が極端に少なく、バストアップが多い)
>・バストアップが増えることと関連して、キャラ間の会話が多い(単位ページあたりのセリフが多い)
>
>上記を総合すると「ミクロなエピソードに多くのコマ/セリフが割かれるが、それは話の進行には関与せず、ストーリー的な内容は薄い」のようになります。
>云い換えましょう、「ストーリーは薄いがキャラ間のコミュニケーションは濃い」1 ということです。
>
>で、筆者はこれを「キャラクターに萌えたい」という要求に最適化した結果である、と評価します。
萌え4コマが、4コマという形式を選択していることの意味合いをもうちょっと考えてみたいんだけど、たとえば、「『達成すべき目標・達成するまでの過程』を描いたもの」としてのストーリーが「薄くなる」という言い方ではなく、「薄くても構わなくなる」「薄くても許される」と言いなおすと、自分はもっと腑に落ちるように思う。
一つには、普通のマンガの番外編で、よく4コマ形式が見られたりするから。本編にあたる普通のマンガでは、当然のこと「『達成すべき目標・達成するまでの過程』を描いたもの」としてのストーリーが求められるけど、息抜きや閑話休題としての4コマ番外編は、そのストーリーが「薄くても構わなくなる」「薄くても許される」。というか、それこそ、本編では見られない、登場人物たちの隠れた素顔や普段は読めない人間関係こそが番外編で求められるのなら、「キャラ間でコミュニケーションしていればよく、その内容は問わ」ず、「どんなシチュエーションや仕草で萌えられるか」が読者に焦点になる。だから、「『達成すべき目標・達成するまでの過程』を描いたもの」としてのストーリーは、番外編ではどちらかというと雑音染みたお邪魔虫。4コマという形式が理想的と言えるのかな、と。
萌え4コマは、本編無き番外編、と捉えると、個人的にしっくりくるケースも少なくないように思う。
ただ一方で、「ストーリーが薄くなる/を薄める」ことで自動的に「キャラ間のコミュニケーションが濃くなる/を濃くできる」もんでもないように思う。そこは、作品によるのかなぁ。「コミュニケーションが濃い」=「関係性に萌えやすい」という理解でいいなら。
あと、「関係性に萌える」という結論を読んで、すぐさま「やおい」が頭に浮かばざるをえなかったんだだけど、それに触れてないのは、ワザと?
【漫画】所謂「萌え四コマ」について
こんなサイトがありました
http://www.oresen.net/blog/2009/06/01/moe-4-koma-2009/
私もきらら系統読者の端くれとしてこれは反応しなければならないでしょう。
的確すぎる!!!
あまりに的確…
ジャンプとの意外な共通点が面白いです。
というかブリーチがあれだけ文句を言われながら人気作品である理由がほぼ完璧に説明できてる気が。あれって上記の方法論で語るなら完成度高いですよね。
早速の夏バテでレス遅くなっておりますが……。
>実物の人
>すぐさま「やおい」が頭に浮かばざるをえなかったんだだけど、それに触れてないのは、ワザと?
わざとじゃないですw
書いてる時は全然意識してませんでした。
ブックマークの方でも指摘がありますが、
「やおい」と対置してみると、「百合」との親和性も意味ありげに思えますね。
(じゃあ何で「関係萌え⇔同性なんだ」って別の疑問もありますが)
>匿名
ブリーチは、ある意味「王道のジャンプ漫画」ですからねえ。
良くも悪くも、ストーリーを真剣に気にするような話ではない、ってことですね。