総論としての「百合漫画」、各論としての「つぼみ」「ひらり、」

※基本的には「つぼみ」「ひらり、」がなんだか分かる人向けのエントリだと思ってください。
(特に説明はしません)

■能書き

 ある作品やジャンルが商業のルートで流通する、ということは、つまり「そのような作品・ジャンルが『回答』となるような需要が存在する」ということです。
(需要がなければ採算が取れず、採算が取れなければやがては市場から消えて行くことになります。採算を度外視すれば続けることは可能ですが、それはここで云う「商業のルート」とは意味が変わってきます)

■総論としての「百合漫画」

 で、「百合漫画」1 の元になる需要は以下のようなものだと理解しています。

・女の子が好き
・モブであろうと男は見たくない
・読者自身を投影する対象としての「主人公」は不要、または、男でなくてよい
・「男⇔女」を前提とした恋愛のルールから外れることによる、照れ・恥じらい・背徳感・緊張感(等)が好き

(上三つのさらに根底には「恋愛は見るものであってするものじゃない」的な思考がある気がしなくもないですが長くなりそうなので掘り下げません)

 で。

 上記の「需要」を全て満たす、言い換えると上記の「制限」を全て守ろうとすると、創作ジャンルとしての幅が著しく限定されることになります。
 歴史モノとかSFとかいったジャンルは、舞台やネタは規定しても内容についてはほぼフリーパスですが、「百合漫画」では前述の制限の4番目が内容についても踏み込んでいるわけですね。
 例えばギャグ色が強いとあまり(ここで云う)「百合漫画」っぽくはなくなる、というような。

■各論としての「つぼみ」「ひらり、」

 という目で「つぼみ」「ひらり、」を眺めてみると、(事情があるにせよないにせよ、)アプローチの仕方が対極的と云っていい、ように感じるわけです。

 先に「ひらり、」について。

 上記の4項目をかなり忠実に押さえています。
 個人的には仙石寛子がジョーカーですが、その他の人も含め、漫画の水準は総じて高い、と云っていいと思います。(個人の感想です)
 ……が、「制限」故の必然ですが、内容面で被り気味、という印象はやはり拭えません。

 では「つぼみ」ではどうかというと。

 大雑把に
・長編志向
・「制限」から若干外れても許容
・独自の「型」を持っている作家の重用
 あたりが云えると思います。

 3項目挙げましたが、長編志向を挙げると他2つも必然的に付随してくるので、実質的には一項目とも云えます。(当初から単行本の発売を視野に入れていたことが、結果として内容面での幅の広さにも繋がった、という見方です。どの程度意図していたのかは外からは判りません)

 理由がなんであれ、長編シリーズを前提とすれば「馴れ初め部分」以降の話も必要になるし、メインヒロイン2人以外の環境についても多少は掘り下げざるを得ない(モブで男も出るだろう)、という話ですね。

(先日これについて少々話した際に「百合云々というが、きづきあきら玄鉄絢は一般化するのは無理があるのでは?」的な指摘があり、改めて検討した結果、「つぼみ」はむしろ意図的に一般化し辛い作家を集めているのではないか、という結論に達した次第。カサハラテルローはメカモノだしナヲコは音楽モノだし、云々)


「つぼみ」は、もう成功(安定)しつつあると思うので、この路線のまま行くんだろうなぁ、と思います。
(内容には満足していますが宇河さんの新作と単行本化を……w)

 問題は「ひらり、」の方で、(そもそも次が出るのか、という点はさておいて、)現状の、つまり「一話完結主体の」「純度の高い≒原理主義的な」スタイルが、どこまで続く(続けられる)のか、という点を、個人的には非常に興味深く思っています。

(とか書いて3号が出なかったりするとめっさ悲しいのでみんなとりあえず2号は買ってくださいw)


■更に 超 余 談
 書きながら思ったんだけど「百合好きの男主人公視点による、百合ップルヲチ(ストーカー)漫画」というのはどうだろう。
 いや勿論劇薬だし百合専門誌でやるネタじゃない気はするが、ネタとしては可能性を感じるのだけどw

つぼみ VOL.7 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

著者/訳者:西E田 他

出版社:芳文社( 2010-08-11 )

定価:¥ 1,200

Amazon価格:¥ 1,200

コミック ( 338 ページ )

ISBN-10 : 4832279343

ISBN-13 : 9784832279346


ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.2

著者/訳者:高嶋ひろみ 前田とも 仙石寛子 湖西 晶 TONO 石堂くるみ 朝丘みなぎ スカーレット ベリ子 藤沢誠 未幡 榊 花月 平尾アウリ 桑田乃梨子 三嶋くるみ ささだあすか

出版社:新書館( 2010-08-25 )

定価:¥ 998

Amazon価格:¥ 998

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4403670970

ISBN-13 : 9784403670978


  1. 「百合」単体でも事情はさして変わらないと思うが、他媒体の事情には詳しくないので一応限定する。 []

ここ数日ピックアップ「あいまいみー」「天神乱漫」「唐傘の才媛」

 個別に語る余力ナッシャブルであります。


 ちょぼらうにょぽみあいまいみー
 ソメラちゃんの時に云いたいことはあらかた云ったので興味ある人はそっち見てw
 相対的にはややマイルドになっていますが、キチガイがマイルドになった結果として微妙に生々しさが増していて、読者は多分ソメラちゃん以上に選びます

あいまいみー

 一番ヒットした奴w

 やまぶき綾・ゆずソフト天神乱漫
 完全に作者買いです。(参照
「エロゲ原作の全年齢コミカライズ」と聞いて想像する通りのものだと思って問題なし。
 作者好きなら。

天神乱漫
 絵柄こんなんね

 緋鍵龍彦唐傘の才媛
 完結巻。
 アレな設定で入って一切減速せずアレなノリのまま駆け抜けた「なんか異常な作品」だったことは疑いの余地なしですねw(1巻感想

唐傘の才媛
 刺身包丁(とも違う?)で魚解体して顔に返り血付けながら鼻歌歌うヒロイン、という絵面で大体判るかとw

あいまいみー 1 (バンブーコミックス WIN SELECTION)

著者/訳者:ちょぼらうにょぽみ

出版社:竹書房( 2010-08-27 )

定価:¥ 860

Amazon価格:¥ 860

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 481247440X

ISBN-13 : 9784812474402


天神乱漫 1―LUCKY or UNLUCKY!? (電撃コミックス)

著者/訳者:やまぶき 綾 ゆずソフト

出版社:アスキー・メディアワークス( 2010-08-27 )

定価:¥ 599

Amazon価格:¥ 599

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4048688928

ISBN-13 : 9784048688925


唐傘の才媛 2 (電撃コミックス)

著者/訳者:緋鍵 龍彦

出版社:アスキー・メディアワークス( 2010-08-27 )

定価:¥ 599

Amazon価格:¥ 599

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4048688065

ISBN-13 : 9784048688062


双見酔「セカイ魔王」 俺達は君を待っていたッッッ双見酔の新作だ――――――――ッ

 いやふたみんそういうキャラじゃないから。(じゃやるなよ)


 まんがタイムきららキャラットにて新連載です。
(何か全般に面白かった気はしますが今は略。リッカ妙にエロくて良いすなぁ)

 前作は高卒ニートがダラダラしたり就職活動をしようとしたりハローワークの人の多さにめげたり履歴書を書こうとしたり履歴書を書いたりダラダラしたりする(履歴書を書くまでに二節使い、それでもまだ面接にすら至っていないあたりを汲んでいただきたい)、史上まれに見るヌルさが一部界隈に大ヒットした双見酔なわけですけれども、新作はタイトルからして「セカイ魔王」と何やらファンタジーげ、おいおいテンション低くダラダラする漫画じゃないのかよ大丈夫か?と心配する人が居たとか居なかったとか。

 これがまたびっくりするほど双見漫画でさw

 ……ええっと、作者は元RO廃人ということに俺の中ではなっているのですが(特に根拠はない)、そういう俺の偏見にもちょー合致する何とも素敵な怪作ですよハイw

 はい導入部。
 ちっちゃい妖精さんとヘタレ勇者の二人旅、のお話。表向き。

 この勇者がつまりかなえちゃんポジションというか、超やる気ないの。初登場シーン見ても判るように、弱いしw
 で、そういうダメ勇者をなんとかこうなだめすかしてちゃんと冒険させようという妖精さん、……だったら話は単純なんだけれども。

 前作も「基本はユルくありつつ、ふとした瞬間に一瞬素に返ってユルさがぶっ飛ぶ」、のような面がありましたが、今回もそんなん。
 超大ネタの仕込みあり。(詳しくはWEB誌面でね!)

 ……これはなんというか、率直に云って凄いね。
 ユルくダラダラも行けるし、そこそこシリアスにも行けるし、(人気等で)そのどちらを選んだ場合でも間違いなく「作者の芸風のうち」という。
 正直傑作の予感しかしないです。マジで。


 前作。
「けいおん!」を内容がないと云ってる人なら発狂するレベルで内容がなく、テンションが低く、で面白いですw
 未読なら是非。

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)

著者/訳者:双見 酔

出版社:芳文社( 2009-07-27 )

定価:¥ 860

Amazon価格:¥ 860

コミック ( 120 ページ )

ISBN-10 : 4832278282

ISBN-13 : 9784832278288


空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)

著者/訳者:双見 酔

出版社:芳文社( 2010-05-27 )

定価:¥ 860

Amazon価格:¥ 860

コミック ( 120 ページ )

ISBN-10 : 4832279157

ISBN-13 : 9784832279155


緋鍵龍彦「断裁分離のクライムエッジ」 奇人変人ラッシュなのに燃える展開なの何でだろう?w

(ネタバレ回避で具体的な内容にあまり突っ込みません。悪しからず)

 毎回じゃないけど掲載時はちょくちょく触れたので個別にはそっち見てもらうとしてですね。

 2巻を通して見ると、展開自体は驚くほど真っ当。
 ただちょっと敵/新キャラの性癖がぶっ飛んでるだけ。
 ……ええ性癖はぶっ飛んでますよそこは譲れませんよ当たり前じゃないですかハハハw

(ここら辺、連載では場面場面の描写に目が行っちゃってストーリー自体が(俺の中で)どうでも良くなってた、って面もありますけど)


(婦警さん再掲)
(ノー説明?)

 2巻中盤から後半にかけてのいろんな意味でのジェットコースター展開とか(泣けるでしょいろんな意味でw)、「にも関わらず」(強調)祝ちゃんがめっさ可愛いとか、そこら辺はネタ抜きでテンション上がると思います。

(どのカットというより流れで見て欲しいので画像は略)
(名場面ラッシュなんだぞ)
(いろんな意味でねw)


 結論としては男ってバカですね、って話だ、多分w

断裁分離のクライムエッジ 2 (MFコミックス アライブシリーズ)

著者/訳者:緋鍵 龍彦

出版社:メディアファクトリー( 2010-08-23 )

定価:¥ 570

Amazon価格:¥ 570

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4840133646

ISBN-13 : 9784840133647


佐藤秀峰×一色登希彦の合作ネームが超絶凄いのでマジ必読な件。

佐藤秀峰 オンラインコミック | 漫画 on Web 被ブックマーク件数
http://mangaonweb.com/creatorOCContentsDetail.do?no=30598&cn=1

 モノとしては「佐藤秀峰がネーム(初稿)⇒一色登希彦が演出意図を汲みつつ修正(二稿)」というモノですが。
(リンク先左ページの「読む」ボタンから)

 正直言葉にならんわー。これは。

 二人とも漫画は確実に巧い人ですんで、「巧い人が描いたネームを巧い人が直す」ってすげーなーと。(単に直すだけじゃなくて、「どういう意図でこうした」という解説があるのが特に良い)
 完成原稿にしないでこれ自体が商品になるレベルかと思いますよ。

 漫画好き、あと「自分でも描く」っつー人は必読っす。

(個人的に唸ったのは22ページすね。ちょっと他の人では出てこない気がする)

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