今ヴァレリア島の内紛が大変なことになっててblogとか書いてる場合じゃないんだけどね?
米澤穂信のミステリ・フロンティアというと「さよなら妖精」以来ですかね、6年ぶりとなります。
あちらはまさに現実の世界をネタにした作品でしたが、本作は中世ヨーロッパ風の世界をベースに魔術や呪いやその他のオカルト要素てんこ盛りの、云わば「生ける屍の死」系の「拡張ルールミステリ」であり、共通点は作者名ぐらいです。
ソロン島の領主ローレントは、かつてその島を支配していた「呪われたデーン人」がいつか島を取り戻しに来ると信じていた。
いよいよ襲撃の日が近いことを知ったローレントは、彼らに対抗すべく幾人かの傭兵を雇う。
身なりのいい騎士、薄汚い弓兵、言葉の通じない女、巨大な青銅人形を操る子供、などなど。
一方、東方の暗殺騎士団からローレントを狙って刺客が放たれた、という話を追って、暗殺騎士団に対抗する「聖アンプロジウス病院兄弟団」から来た騎士とその従者もソロン島に到達する。
……そしてローレントは斃れた。
(記述の簡潔さを優先したので部分的に事実と異なりますが流せ)
タイトルに上げた「ファルク」は最後に挙げた暗殺騎士を追ってきた騎士、です。
設定は中世+ファンタジーなんだけど、言動はまるっっきり「探偵役」そのまんまで、「本格ミステリ」として読むなら違和感はないでしょう。(というか「変格ミステリの筈なのにあまりに型通り」なことに逆に違和感を覚えるかも、というぐらい)
まず、普通に面白かったです。
次に、ミステリ的には案外普通です。「魔術のある世界」という魅力的な舞台を導入した割には超地味、というか。
(「読者が魔法世界の住人じゃない分、『謎』部分に魔術を介在させるわけにはいかない」んだろうとは思いますが、でもやっぱり「地味」と感じる人は多いのではないでしょうかね)
最後に、ライトノベル、というかキャラクター小説としては、大満足でした。
作中の視点人物はローレントの娘(アミーナ)で、彼女がファルク達の調査に同行する形で展開されるのですが、ファルクとアミーナ、それにファルクの従者(ニコラ)のキャラ&掛け合いは、ミステリ部分より良かったんじゃないかしら。
(終盤の山場の盛り上がりっぷりが「ミステリと関係ない」という点にもよるが詳細略)
(一方で、設定だけなら十分魅力的な傭兵たちの描写があんまり掘り下げられなかったのは残念ですが、現状でもそこそこ長いので仕方ないのかなぁ、とも思います)
米澤穂信未読者には良いと思います。
問題は既読者で、「ボトルネック」「さよなら妖精」あたりと違うのは当然として、「古典部」「小市民」のシリーズが好きという人は、ミステリ的に好きなのか「高校生っぽさ」が好きなのかで反応は割れるかも。
(前者には大いにアリだけど後者は「なんか違う」って思っても不思議じゃない)
米澤穂信未読者には良いと思いますけど!(二度目)
著者/訳者:米澤 穂信
出版社:東京創元社( 2010-11-27 )
定価:¥ 1,890
Amazon価格:¥ 1,890
単行本 ( 338 ページ )
ISBN-10 : 4488017657
ISBN-13 : 9784488017651




