■シリーズについて
笠井潔のいわゆる「矢吹駆シリーズ」は、「探偵が殺人事件の謎を解く」という水準の話ではありません。
「各作品には実在の思想家をモデルとした人物が現れ、それらモデル人物と矢吹の対話を通して、モデルとなった哲学者の言説に作者流の批判を加える体裁をとっている(以上wikipediaより)」とか、そんな感じ。
(本作の「実在の思想家」はラカンなんだって。俺知らんけどw)
かいつまんで説明すると、
「普通の殺人事件は警察の組織的・科学的な捜査で対応できる。一方、『イっちゃった犯人のアレな事件』に対しては、警察の捜査は無力となる」
「矢吹駆は『犯人のイっちまいっぷりを理解し、解体する』のが望み」
「最近は『ニコライ・イリイチ』というラスボス敵存在を追跡中」
という感じです。事件を止めるとか正義とかそういうことは基本的に眼中にありません。
■本作について
ルーマニアから(フランスに)亡命してきた軍人が、フランス政府の管理する建物内で射殺される、という事件が発生した。被害者は謎の言葉を書き残しており、また現場から立ち去る若い女が目撃されていた。
それより一週間後、パリ市郊外で全身の血を抜かれた女性の死体が発見された。この<ヴァンピール>事件はその後も一週間おきに発生し続けることになる。
2つの事件に関連はあるのか? あるとすればどんな?
といった謎に駆が挑むわけですが、このロジックのクドいぐらい精緻、というか圧倒的にクドく圧倒的に精緻な本質直観と論理構築、がスゲーです。
……いやあの、ボキャ貧ですみませんが、この論理構築とかは片手間で説明できないので、「スゲー」としか云えねーですw
(以下、若干ネタバレ気味)
序盤(中盤?)の本編とはあまり関係ないような思想についてのやり取りが、謎解きの場面で急に絡んできて推理を支えたりして、「うっひょおおおお」ってなりました。
俺的には初めて「矢吹駆の推理に脳が付いていった」と思いますw
(前作までは「何かすげー」ぐらいだったので……w)
■余談
笠井潔は、1つの見地から「社会も」「ミステリも」「オタ文化も」まるっと包摂するような論を張るので、(全面的に同調するわけではないけど)思想家として、というか人格として、非常に参考になるというか得るものが多い人だと思います。
堅い本読んでないと脳が拒絶反応起こす可能性ありますが、文系(ミステリ)オタだったらいくつか読んどいてほしいなぁ。
(矢吹駆シリーズの場合、後の作品がそれ以前の作品のネタバレになっていることが少なからずあるので、基本的には出た順に読んだほうがいいです。でも、本作のネタバレ度は低めなので、本作から行くのもそれなりにアリです。哲学者とかオイディプスはダメですw 青銅は矢吹駆出てこないのでダメですw)

吸血鬼と精神分析
著者/訳者:笠井潔
出版社:光文社( 2011-10-18 )
定価:¥ 2,625
Amazon価格:¥ 2,625
単行本 ( 803 ページ )
ISBN-10 : 4334927831
ISBN-13 : 9784334927837