河野裕「ベイビー、グッドモーニング」 コンパクトで豪速球で「これラノベじゃないよね」な話

 粗筋:「赤ちゃんが生まれておはようって云う」話(判らんわ)


 短篇集、作者的には「連作短編集」で、内容もリンクしてて、プロローグとエピローグまで付けると完全に「1冊」で成立・完結したお話。

 もうちょっと云うと、死期が迫った人のところに現れる死神(腰まで届く長髪で、Tシャツとデニム地の短いスカートの女の子)が、何だかんだの事情で4人の死に際を見届ける(?)話。
「死神ってなんだよ」「死を見届けてどうすんの」「それが何で『リンクした話』になるの」あたりは、読めば判る。


 みんな優しいのよね。
 死期が近いことを告げられた人も、その周囲の(残されることになる)人も。
 なもんで、「やり残したことをやる」とか「近くの人に心配させないように」とかそういう話になって、……不器用で切ねえんだわ、これが
 そのすべてがやり遂げられるわけでもない、という点も、無論ある。
(捨て鉢になって重大犯罪に走ったり、死神の娘を殺そうとしたり、では話が成立しないといえば、まぁそう)

 特に俺が推したいのは最後のクラウン(道化師)の話。
 それまでの3編はそれなりに若い人だったけど、この話で「死ぬ人」は70とかそれ以上の老人なのね。
 で、それまでの3編は「死ぬ人目線」で死神と話をしたりしたんだけど、この話では「残される人目線」で、クラウン老人と「最後の数日間」を過ごすのね。(視点人物としては「最後の数日間」の認識はない)
 それまでの3編の話と、クラウン老人の最後の行動とで、……まぁ泣くね。
 切ないわカッコいいわ寂しいわ切ないわで、かなりグッと来る。
 大・喝・采w


 オビでは「もうひとつの『サクラダリセット』」云ってますが、サクラダ的には完全に無関係です。
 テーマ・論点・問題意識、なんかが共通するところもある、という意味ではそうだけど、この文句は営業目的だと思っていい。

 そして、だからこそ他人には薦めやすいです。何しろ一冊完結なんで。
 ぶっちゃけ人が死ぬ話だし、そしてカタルシスとか達成感とか死神の娘の萌え話とか無いしで、(俺のイメージする)ラノベ読者に受けるような話ではないのですが、云い方変えると「このブログ、この記事読むような奴」にはまず間違いなく合う、少なくとも「読んで失敗ってことはない」までは請け合いますw

 これ読んで面白かった、あるいは「悪くないけど萌えが足りねえよ」みたいに思ったらGO TO DMC咲良田、で良いと思います。
 読むべき。

ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2012-03-31 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 319 ページ )

ISBN-10 : 4041002141

ISBN-13 : 9784041002148


河野裕「サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA」 言葉にならない

 前の巻からそうなんですけれども、7冊分というそれなりに積み重なった「サクラダリセットの世界」との付き合いを経て、今の俺には、どのキャラというよりも「この(その)世界そのもの」が愛おしすぎてどうにも言語化出来ないのでありますよ。


 前の巻の感想で、「正義についての話で、それに共感できるからいいんだ」みたいなことをちょっと書いたんですが、そうするとじゃあ「なんで共感できるの」って話になりますよね。

 多分それは、言葉にするとどうしようもなく陳腐だけど、「キャラが魅力的だから」というところに帰ってくるんだろうね。
 具体的には、特に浅井ケイと相麻菫であり、そして春埼美空、この3人。
 ……特にあのー、相麻菫、ヤバいです。(前も書いたな)

 話が始まった時からケイと春埼が「セット」で、途中から「捉え所のない行動でケイを翻弄する猫みたいな少女」として相麻菫が出てくるので、ケイとの距離や描写のされ方からして(ケイはまだしも読者にとって)相麻はそれほど印象が良くないし、「メインヒロインの春埼の当て馬」としての存在、以上には思えないと思うんですが。
 最初は。
 ……実際、全然こっちがヒロインだよおおおうw

「相麻菫が何故それほど『全然こっちがヒロイン』なのか」はストーリーの根幹に関わるのでここでは伏せますけど、「これに惚れない男、居るの?」ぐらいは云います、俺が。
 ……居るんだけどな。本編の主人公w

 終わってみれば、「読者が相麻菫に惚れるポイント」はこれでもかと出てくるのに、「読者が春埼美空に惚れるポイント」は(直接は)無かったような気がするのよね。
(もちろん)ケイと春埼の距離の近さ等々は認識していて、視点人物であるケイに重なる形で「春埼の良い娘っぷり」も判るのですけど、それを云ったら「相麻の良い娘っぷり」は異次元じゃないすか

 ……………………というあたりがね、言葉にならないです。
(シリーズ通読して相麻に萌え転がってる人には俺の「言葉にならなさ」が通じると信じるw)
(そして、ケイが春埼に惚れたポイントって、やっぱりハッキリとは判らない、気がする)(書かれてたっけ)


 1巻から全てを読み返す体力はないんですが、
1.ケイと春埼と咲良田と能力の顔見せ
2.先代魔女と相麻の話
3.相麻菫の再生の話
4.(短篇集)
5.「夢の世界」の能力者の話
6.「計画」が明らかになる話
7.全てに決着が付く話
 ぐらいの整理でそれなりに悪くないと思います。

 全てを最短最速でやった、とは云わないにしても、話に遊びがほぼ無いんですよねこう見ると。
 7巻の「総力戦」、初期に登場したあの人やあの人の能力もフル活用して、ということはそれ以前の「日常ほのぼのエピソード」もここに繋がっているわけで、構成? 構想? がしっかりしていること、それをやりきったこと、の二点で評価されていいと思うし作者的にも満足感高いんじゃないかなぁ。


 ベイビー、グッドモーニングは別途触れますけど、この人、本当にラノベ的では無いですね。
 3年以内にハードカバーで絵のない小説出して、10年以内に一般文芸のなんかの賞取る、と予想しますw

サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2012-03-31 )

定価:¥ 720

Amazon価格:¥ 720

文庫 ( 429 ページ )

ISBN-10 : 4041002095

ISBN-13 : 9784041002094


河野裕「サクラダリセット6 BOY, GIRL and –」 傑作であると云わざるを得ない(俺にはね) / でエンタメ語りをする。聞け。

 聞くのだ。

 あ、「6巻(そして7巻)」のストーリー的な話は、あんまりしません。
(ちょっとだけ混じる)


 まず形式的な話。

 作者あとがきによると
「本書と七巻は、かなり強く繋がっています。(略)普通に読むと七巻と合わせて上下巻構成の物語に見えるのではないでしょうか」
「『サクラダリセット』シリーズは次巻で完結する予定です」
 とのこと。
 実際、6巻は「エピソードとして切りがいいといえばいいかも知れんが河野裕版レイニー止めではあるよね」といった代物となっており、すごく床掻きむしったり壁殴ったりしたい感じです、はい。
(「レイニー止め」が通じねえかなぁとか思わなくはないが、ググれ)


■エンタメ語り&サクラダリセット語り

「ある作品を(いかなる意味でも)いいと思う/悪いと思う」というのは、抽象化して云うなら「その作品で提示されている価値観に、読者であるわたし(あなた)の価値観がノれる/ノれない」という話なわけですわ。

「カッコいいヒーロー」が、「可愛いヒロイン」が、「面白いギャグ」が、描かれたとして、作者が(あるいは「その作品が」)肯定的に描写するその「カッコよさ」「可愛さ」「面白さ」を、わたし(あなた)も肯定的に捉えられたなら、わたし(あなた)にとってそれは「いい作品」でしょうし、そうでなければ「悪い作品」ということになる。
(「標準的には」で、そうでない構成もアリではありますが)

「作者がカッコいいと思って描いたヒーローがわたし(あなた)にとっては『いけ好かないキザ野郎』でしかない」としたら、その作品を面白く読むのは難しいよね、みたいな話ね。(他のパターンも同様)

 なんでこんな話をしたかというと。

「サクラダリセット」シリーズは、要するに「正義について」の話なのよ。
(前の巻の感想でも触れてますが、「これからの「正義」の話をしよう」が真面目に「関連書籍」としてアリです)

 作中で特に大きな問題として問われるのが、「何らかの『犠牲』を伴うことで『最適』が実現されたとして、その『犠牲』は許容する(受け入れる)べきか?」という問いなのね。
(現実には「程度問題」ですが、この作品はフィクションで、現実には存在しない「能力」が存在し、「現実には成立しないシチュエーション」を伴ってこの問いを立てることが可能なわけ)

 で、(これまでにもより小さい形で問われてはいたけれども、)6巻でケイがした「選択」が、俺にとっては実に「ノれる」ものだったわけ。
「ですよねーw」みたいな。

 ……ここまで、「わたし(あなた)」という表記を繰り返してきましたけど、ここには「わたし(あなた)の正義」を持ってこの作品を読んでほしい(そして、その「正義」は人によって異なる)というニュアンスを込めています。
 人によって異なるから、ノれる人・ノれない人、いると思いますけど、俺はノれてしまった、だから、「傑作であると云わざるを得ない(俺にはね)」なのね。

 これとは違う「正義」を持ってる人も居るんじゃないかねえ? そゆ人は「何ワケ判んねえこと云ってんだクソが」とかなるかも知れない。
 それは俺は知らんw


 そ れ は そ れ と し て、だな。

 本シリーズ、正ヒロインは春埼美空・副ヒロインが相麻菫、という扱いだと思うのですが、今巻の相麻菫はヤバいでしょう。文系オタを殺しに来てる
 春埼が本編で蚊帳の外気味なこともあって俺としてはルイズコピペが相麻菫で大音響で脳内に響いて悶絶するのだわ。
 ……ケイはとりあえず話を丸く納めてから爆発すればいいw


■余談

 あとがきで漫画版について触れてますが、俺としては「お察ししやがれ」という言及に留めておきます。
 ……スニーカー文庫発少年エース行きの死屍累々っぷりは如何ともしがたいですなぁ。(死屍累々って云っちゃったよおい


■余談2(つか関連リンク)

これからの「サクラダリセット」の話をしよう 被ブックマーク件数
http://longfish.cute.coocan.jp/pages/2011/110109_sakurada/
 4巻時点ですが、シリーズ全体の解説としては秀逸なので再掲

サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2011-11-30 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 366 ページ )

ISBN-10 : 4044743061

ISBN-13 : 9784044743062


サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-05-30 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 312 ページ )

ISBN-10 : 4044743010

ISBN-13 : 9784044743017


河野裕「サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL」 OKわかった、こいつは面白い。

 どういう語り方で行くべきでしょうかねえ……?
(いやしかしサンデル先生の本なしで&1巻の時点で評価できたらそれはすごいと思うわ?)


 色々あるんですがとりあえず……背景設定や話の最終的な決着のあり方、もう全部決まっているでしょ?
 明らかに色々と謎やら因縁やらを抱えていることを匂わせつつとりあえずは当面の話を進めていき、そして話が解決してみると過去の因縁に一歩近付いている、的な話の展開は、長編としては教科書的に読みやすいです。
 以上を一言で云うと構成が巧い。

 これは、ケイと美空の能力・咲良田という街の成立過程と管理局のあり方、といったあたりのキャラや能力の配置が……良いといえば良い、恣意的といえば恣意的、なこととも関係があるのでしょうが、俺としては十分作者の裁量の範囲内だろうとは思います。
(ケイにフォーカスした三人称視点であること、ケイ自身が計算高いキャラとして描かれているお陰で(多分)、設定自体に違和感を覚える場面は多くはなかったです1

 ラノベらしからぬ点というと、ゲストキャラ使い捨てじゃないこと、も挙げて良いでしょうかね。
 いえゲストキャラ自体は居るし(特に今作のキャラは)もう二度と出てこないとは思いますがそういう問題じゃなくて、ゲストキャラは出てくるんだけど、話の上では「ゲストキャラとのやりとりの中でケイや美空が難題に直面すること」つまりケイと美空がメインで、ゲストは文字通りのゲストの意味合いが強い、んです。(まだ2巻ですが)

 言い方変えると広がるんじゃなくて深まる感じ。


 タイトルで「OKわかった」としたのはそういう感覚です。
 世界が広がっていくんじゃなくて、設定が掘り下げられ、謎や目的がどんどん収斂していく感覚がある。それが(あまりラノベ的ではない気がするけれど)興味をグイグイ牽引する。

 気になる点も無くはない、というか主人公陣営の能力が概ねチート気味で、バトル的な要素を期待するとイマイチな印象、となるかも知れません。
 ……ただまぁ、この話はケイと美空が正義を巡る難しい問いを付きつけられつつ進んでいく話、ということに俺の中でなったので、チート気味な能力も(難しい問いを突き付けられる場面を作り出すためである限りは)アリでいいんじゃないかなぁとは思います。
(この点は評価が割れる可能性も無くはない)

 ……正直派手さはないですがそれでも読む価値はある、と思います。
 おすすめ。


 サンデル先生の本に触れていませんが(先週から今週にかけて読んだ)、両作品をともに読んでいるなら連想するのは必然である、というぐらいテーマはダダ被りでしたw(批判ではない)
 単体でもいい本だと思いますしサクラダリセットの副読本としても大いにアリかと思いますが、両方を並べて語ると先日の記事のようにしかならないような気がするのでそれは俺はパスですw

サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-05-30 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 312 ページ )

ISBN-10 : 4044743010

ISBN-13 : 9784044743017


サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2010-02-27 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 410 ページ )

ISBN-10 : 4044743029

ISBN-13 : 9784044743024


  1. つまり、ご都合主義っぽい展開に仮になったとしても、「ケイがそのように計算していたから」で済ませられるということ。 []

河野裕「サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY」 まずは1冊。

 一言で云うと「ふむ」でありました。


 もうちょい詳しくいきましょう。
 てことで承前。

これからの「サクラダリセット」の話をしよう 被ブックマーク件数
http://longfish.cute.coocan.jp/pages/2011/110109_sakurada/

 数日前にはてブ経由で見かけた上記の記事がめっさ面白く、で興味を惹かれたというのが話の始まり。
(上記の記事はマイケル・サンデル「これからの『正義』の話をしよう」と河野裕「サクラダリセット」シリーズを、主にそこで語られる「正義」の観点から比較・検討するものである、といっておいてとりあえずは良いだろう。細かいところは実際に読んでもらうしかないけれども)

 実際のところ今更「正義」なんて人に教えてもらうようなことだとは思っていないけれども、それはそれとして「『正義』をテーマに何を・どう語るのか(特にライトノベルの器の中で)」という点は普通に興味を持った、わけだわよ。

 その観点から行くとある種の期待はずれ、というか、上記の記事が比較的丁寧に・詳細にレビューしているおかげで(せいで?)、「読んで初めて知ったこと」というのがあまり無いのだよな。「あらかた知っていた内容を確認する作業に終始した」感じというか。(だから作品には罪はない
 冒頭「ふむ」というのはそういうニュアンス。

 他方、内容面でも若干の不満はある。

 これは「最近のラノベの1巻目」ということでしょうがないんだろうけれども(と勝手に思っている)、主人公の「浅井ケイ」が迷わなすぎ。
 過去に色々あったにしても、その結果としての現在の彼の行動にあまりに迷いがなくて、「正義がテーマ」な作品の1巻目としては、控えめに云って違和感を禁じえない。まぁ、このへんは明らかに「後で書くフラグ」なのでとりあえずは置いておきますけれども。
(キャラ造形の面で「それご都合主義じゃね」な点があるのは一切気にしない)


 ネガティブなことしか書いていませんが普通に「読める」作品でしたし1 前述の記事でも2巻はそれほど「迷いなく」はいかないようなので、その辺は期待しています。

 ……やっぱサンデルさんの本も読まんとあかんすよねえ……w

サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)

著者/訳者:河野 裕

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-05-30 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 312 ページ )

ISBN-10 : 4044743010

ISBN-13 : 9784044743017


(内容についてビタ一触れなかったらいいレビュー、ということに俺の中ではなっているw)

  1. 俺はそもそも「ラノベ的なもの」に滅茶苦茶採点が辛い。 []

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