相沢沙呼「ココロ・ファインダ」 (女子高生の生態は知らんけど)アリだと思う!

 酉乃シリーズ(感想⇒1/2)もマツリカ・マジョルカ(感想(列挙版))も読んでるけど基本ノリがどれも近くて良くも悪くも安定感はあるわね。(後述)
 ホントに良くも悪くも。

 ……な中でこれは芸風がいい方に出たんじゃね(、って男としては思いますが、女子高生とかかつて女子高生だった人的にどうかは知りません)


■概要
 4話収録の短篇集。
 カテゴリとしては紛れもなくミステリでしょうが、「写真部×女子高生×青春モノ(ミステリ要素もあるよ)」ぐらいのイメージのほうが近いんでないかな。
 日常の謎? ……まぁそうかも。
(カメラの機種やファッションブランド、その他小道具類が実名でガンガン出てきますが、正直その固有名の意味は判断しかねます)

■設定等
 共学の高校の写真部に所属する女子4人が話の中心です。
 部長が男子なのは明記されてますがその4+1人以外の写真部員がどんな状況なのかは詳述されていない、……気がします。(3年の代以降は女子ばっからしい気配はあります)
 作中の会話も「女子高生同士」率が高く、この点のリアリティについても判断しかねるというのが正直なところ。(「明らかな違和感」はないけど)
 ……「学校帰りにルミネ寄って最初にトイレ入ってスカート短くしてから巡回」みたいな経験、ねーもんなぁ。
「なんかこの生き物たち、体温高そう!」とは思いましたw)

■話&登場人物
 記述は収録エピソードの「視点人物」順
・野崎鏡子(ミラ子)
・(秋穂)
・日比野香織(カオリ)
・天野しずく(シズ)
 カッコ内は作中で主に使われる呼び名、秋穂は一人だけ下級生で姓が呼ばれる場面がない気がするのでフルネーム判らなかったお?

 話は、友人関係・他人の容姿や能力へのコンプレックス&嫉妬・進路、等々への、「誰でも身に覚えのあるような」「当事者としては深刻で」「終わってみれば『そんなことで』というような」不安や悩みやらを、軽妙でありつつ妙にウェットに(なんだそれ)描いていきます。

 過去作読んだことがあるなら、ポチ君や柴犬がグチグチやってたのをこんどは4人の女子高生がグチグチやってると思えばそう違いはないです(ざっくりしてんなおい
 冒頭、「良くも悪くも安定感はある」って書いたのはそれで、実にすっきり爽やか「ではありません」
 本作の巧いところは、持ちつ持たれつと云うか、「Aさんの話で『探偵役』に回ったBさんにも悩みはあって」的に各人それぞれにスポットを当てているので、全体として4人(特にミラ子・カオリ・シズ)の信頼というか友情というか、の篤さが出ているところ、でしょう。
(恋愛(百合)ではない。あと、正直秋穂は浮き気味ではあると思う)


 俺としては一番すんなり読めた(古傷が疼くお……)作品ではあるのですが、歴史的に女子高生だった経験がないため、ディテールの評価はできないところが多く、感想として片手落ち感はあります。
 写真クラスタと現旧女子高生の反応は、どんなもんでしょうかね?

ココロ・ファインダ

著者/訳者:相沢 沙呼

出版社:光文社( 2012-04-18 )

定価:¥ 1,470

Amazon価格:¥ 1,470

単行本(ソフトカバー) ( 224 ページ )

ISBN-10 : 4334928218

ISBN-13 : 9784334928216


相沢沙呼「ロートケプシェン、こっちにおいで」 酉乃初は女子高生マジシャン探偵カワイイ

 だが須川、てめーはダメだ。


※この記事は相沢沙呼の「酉乃(トリノ)シリーズ」2作目の感想、同時に「酉乃シリーズ」全体の感想(ネガ編)、です。
 ポジ編は前の記事で

 ……タイトルと1行目で云いたいことは云い切ったのですがw、とにかく本シリーズの「ダメポイント」は須川のパーソナリティに集中します。
 ErogameScape的には「主人公がダメ」「このキャラクターが不快」であり青春ミステリ界の貴明@ToHeart2と称しても過言ではありますまいw
(ErogameScape的に云うな、という指摘は却下)


■ラノベ(キャラクター小説)観点

「酉乃が好きだけどヘタレ」はまぁ良しとしますがヘタレるにも限度あんだろおい

「基本的にはヘタレだけど何処かの見せ場で頑張りました」だから主人公としてもお話としてもアリなのであって、「ヘタレな僕だけどここは頑張らなきゃ!」「……でもなぁ……」みたいに、気合を入れたと思ったら追加でヘタレることが多くてかなーりゲンナリきます。
 酉乃自体はオフ状態でもオン状態でも安定して可愛いだけに(そしてある時期以降誘い受けオーラ出しまくりなだけに)、「何でその状況でヘタレるんだボケ!」とグーパンチの1つも見舞いたくなります。

(二作目の最後(通算9話目)で半歩ぐらい進んだ気はしますが、そこまでを1巻目でやってほしかった)
(更に云うなら、「二作目の最後で半歩ぐらい進んだ」のもあんまり説得的でないというか、単に思い切りの問題に還元しちゃっていいの? という気はする。だって、だとすると「それまでのは特に理由のないただのヘタレ」って話が本決まりになってしまうからw)


■ミステリ観点

 上の話と関係するんですが、須川くんは事件の謎よりも、酉乃への関心・執着の方が強いと思うんですよね。
「事件のことよりも君と一緒にいたい」的な?(そういう状況が直接あったわけではなくイメージとして、ですが)

 本シリーズがミステリよりもラノベ的な印象が強い、というのは視点人物の須川のそういう思考回路によるところが大きいと思うのですが、「事件の謎より酉乃への関心を優先しといて酉乃にはヘタレんのかよ!!」というのは、少なからぬ人が思うのではないでしょうか。

(事件の謎を優先して取り組むが空回りする須川、見るに見かねて助け舟を出す酉乃、みたいな構成ではダメだったのかしらね。
 まぁ、酉乃が須川に助け舟出すきっかけがあまり無さそうではありますが)


■二作目単体感想

 笠井潔に選評で

 作者は登場人物それぞれや、さらに主人公にもあれこれと「悩ませる」のだが、作者自身は妙に余裕ありげで、さほど悩んでいるようには感じられない。
(中略)
 この時代を生きることへの作者の態度に疑問がある。米澤穂信の「古典部」や「小市民シリーズ」に含まれる「苦さ」のようなものが、この作品(※)には欠けている。

(※「午前零時のサンドリヨン」の方)

 って云われていて、サンドリヨンの方は割と同意で、……に比してはロートケプシェンの方は作り物めいた印象は薄かった、というか有り体に云って「苦かった」とは思います。
 キャラクター小説観点としてははっきり改善。

 ……なんだけど。

 ミステリ的に、本作って、「アレ」じゃないですかw

(ちょっとネタバレ気味に行くので隙間空けますよ)

 典型的な「作者が読者だけに仕掛ける叙述トリック」。
 作中の記述(特にRed Back)が誰のことかイマイチ判然としないな、って思って「スペルバウンドに気をつけて」まで終わった段階でひと通り読みなおして頭の中整理して、その矢先に出足払いですっ転んだのですが、トリックのためのトリックという感じであんまり悔しくないのですよね。
(その後の伏線解説、どう見ても強引だしょ)

 いや、全てがダメとも思わない、というか彼女(酉乃ではなく)は明らかに株が上がったと思うし、そちらをメインに取るなら成功と云っても構わないのですけど(「キャラクター小説観点としてははっきり改善」って云った箇所に相当)、なんか、ううん、釈然としないよねえ?

(あと、この学校の百合キャラ率おかしいw)


 一冊目の「安定してるけど食い足りない」感じに比べると、強引さも洗練性も増してる気はします。
「あーだこーだ注文付けたくなるけど基本的には面白い」とは思うので、続編(新作?)も期待はしておりますよ。

(あと須川くんはもうちょっと腹をくくれ&太腿以外にも目をやるべき。うなじとか二の腕とか)

ロートケプシェン、こっちにおいで

著者/訳者:相沢 沙呼

出版社:東京創元社( 2011-11-19 )

定価:¥ 1,995

Amazon価格:¥ 1,995

単行本 ( 333 ページ )

ISBN-10 : 4488024866

ISBN-13 : 9784488024864


午前零時のサンドリヨン

著者/訳者:相沢 沙呼

出版社:東京創元社( 2009-10-10 )

定価:¥ 1,995

Amazon価格:¥ 1,995

単行本 ( 336 ページ )

ISBN-10 : 4488024491

ISBN-13 : 9784488024499


相沢沙呼「午前零時のサンドリヨン」 女子高生マジシャン探偵の事件簿(鮎川哲也賞受賞作) ←キャラ(?)が濃い

※この記事は相沢沙呼の「酉乃(トリノ)シリーズ」1作目の感想、同時に「酉乃シリーズ」全体の感想(ポジ編)、です。
 ネガ編は次の記事で

(感想がポジ編ネガ編に分かれるという時点でそれなりに評価していることは察していただきたい訳ではありますけれども、同時にそれなり以上に評価するのは難しい気もすんですよねえ)


 作品の骨子はタイトルにも書きましたが「女子高生マジシャン探偵」であります。
 教室の隅で一人で憂鬱そうに窓の外を見ている姿が印象的な彼女が、たまたま寄ったレストランバーで弾けるような笑顔でマジックを披露する姿を見かけたことから、一連のお話が、そして須川くんと酉乃の関係は始まっていく、のであります。

 探偵役もワトスン役も高校生、ということで本作は「青春ミステリ」と呼ばれるような作品の系譜に属するわけですが、とにかく酉乃かわいい、これ。
 登場人物が高校生なので「事件」も日常の謎レベルのものとなり、また科学捜査ができるわけでもなく、必然的にミステリ的には小粒感が出てきてしまうわけで、これに引き換え酉乃を筆頭にキャラの立ちっぷり……遠慮はやめてぶっちゃけて行きましょう、おにゃのこの可愛さっぷり(褒め言葉としてのキラキラ感)はミサワ風に云うと「っべー」です。
(ミサワ風に云わないと「ディ・モールトベネ(すごくいい)」です)

 本編は概ね須川くん寄りの三人称で進行するのですが、ここで「教室での酉乃がいかにミステリアスか」「マジックを披露するときの酉乃がいかに輝いているか」「くそっ太腿に目が行く……!!」みたいな意識が読者に叩き込まれるので、ニヤニヤ感であったり須川くんと一緒に自分の鼻の下伸びる感であったり、の完成度の高さは特筆モノです。
 新人のデビュー作とは思えぬド安定ぶり。
(巻末に選評も載っていますが、やはり安定感が高く買われています)

(オタ文脈では「ギャップ萌え」「僕だけが知っている彼女の意外な面」「無防備ゆえのエロさ」あたりがキーワードですかね。
「冴えない男主人公の周りに魅力的なヒロイン沢山」という意味でもラノベ感強いです)


 ここまでキャラクター小説的な観点からの話ばっかですが、ミステリ部分も、(キャラの魅力に食われ気味ではありますが)要素としては「ちゃんと」してはいます。
 ただ、「ミステリであるが故にこの場で踏み込んで語りにくい」という基本的な事情に加え、「解決の場面はキャラクターとしての酉乃の見せ場でもある」という事情により、正直印象が弱い。
(作者もそこら辺気にしているようではあります)

(解決の場面では酉乃がマジックをしながら(≒マジックの演出に合わせて)推理、というか説明、を披露していくような演出がなされることが多く、そこは整った旨さと同時に作為性も強く感じてしまいましたが、某話でそこでゴニョゴニョしてむしろテンション上がりました、とは付記しておきます)
(「某話」が何かは読めば判ります。一遍だけ明らかに他と違うのでw)

 ……根本的かつ決定的な問題点が1つあるのですけれどもそれは「ネガ編」で。


■選評

(審査員のメンツが笠井潔・島田荘司・北村薫・山田正紀とか、俺的には神が3人いる感じで死ねるのだわ)

 受賞作(これ)以外へのコメントの妥当性は判りかねるけど、サンドリヨンへのコメントはもうすごくよくわかる。「巧い、巧いんだけど……」感ね。
 本作はきっとミステリ読者よりラノベ読者の方が受けはいいんじゃないかと思うわw(繰り返しますがここら辺の事情は「ネガ編」で)


 あとそれからキャラがより立ってくるのは2巻ですが八反丸さんも俺的にはかなりポイント高いです。
本編での描写は無かったと思いますが俺の中では八重歯で確定です)(確定て)

午前零時のサンドリヨン

著者/訳者:相沢 沙呼

出版社:東京創元社( 2009-10-10 )

定価:¥ 1,995

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単行本 ( 336 ページ )

ISBN-10 : 4488024491

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ロートケプシェン、こっちにおいで

著者/訳者:相沢 沙呼

出版社:東京創元社( 2011-11-19 )

定価:¥ 1,995

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