
……久しぶりだなぁ感想書くの。
出てるのに気付くのがちょっと遅れて昨日読了。
「五断章」とありますが、別に短編集ではありません。
諸事情により大学を休学して、伯父の経営するやる気のない古書店でアルバイトをしている芳光の元に、古い同人誌に掲載された小説を探している女が現れる。全部で五作あるというその小説を捜しだしてくれたら、一作あたり十万円払う、という。
小遣い稼ぎとちょっとした冒険気分で芳光は依頼を受け、小説の行方を追い始める。
……とまぁ大雑把にこんな感じの導入部。
なお、冒頭時点で既に一作は目星が付いており、探す対象としては四作となります。(あまり重要ではないが一応)
あと、早い段階で明らかになりますが、この小説の作者はこの女の(最近亡くなった)父親です。
この話の中核になるのはやはり創作対象となる五作の小説。
全て掌編で、作中作として五作とも登場します。
一つ変わった趣向として、五作ともリドル・ストーリー仕立てとなっています。
小説の内容自体も「奇妙」と云って差し支えないような代物ですが、内容以前の問題として、「何故この小説が書かれたのか?」そして「何故リドル・ストーリーなのか?」という点は、ストーリーの中核に関わってくることになります。
……あんまり踏み込むと興が殺げるんだよな。
芳光青年はあまりテンションの高い生活をしている訳ではないのですが、彼の思考(行動)と、調査を進める過程で知った「父」の話の対比が、ミステリではなく小説(お話)として非常に秀逸です。非常に陰々滅々としてテンション下がりますw
「やる気のない古書店(のバイト)」という設定も秀逸で、読んでいる最中に思い浮かべた映像では、ほぼ現代の設定(平成四年)であるにも関わらず、退色して灰がかっていました。(……あれ、どうでもいい?)
舞台設定が平成四年ということで就職氷河期なんて言葉も出てくるのですが、これ平成二十年じゃない理由は「生々しくなりすぎるから」なんだろうなぁ、と思います。(その場合でも違和感はないです)
小説としてはかなりお薦め、ミステリ的には中の上、ラノベっぽいのが趣味なら止めときな、そんな感じで。

追想五断章
著者/訳者:米澤 穂信
出版社:集英社( 2009-08 )
定価:¥ 1,365
Amazon価格:¥ 1,365
単行本 ( 236 ページ )
ISBN-10 : 4087713040
ISBN-13 : 9784087713046

上下巻にするような内容だったかねぇ……と思ったら既刊の厚さがこんなもんなんだね。
「夏季」のラストでお別れした二人がその後どうなるか、が焦点だった「秋季」かと思いますが、……えーと、これぐらいは書いて良いかな、単にくっついたり離れたりという話では終わりません。「その後一年間」に亘る話、これまでの流れからすると随分な長期間、の話です。
まずこの点予想外。
……他に何語れるんだろ。
ええとですね、話が始まって割とすぐに小鳩くんと小佐内さんにそれぞれ動きがあるんですけど、この「動き」自体が結構重要というか「事前に知ると興を殺ぐ」内容だと思うのですね。
で、これに触れないとその後の内容に触れようがないというw
なんというレビューアー泣かせ。
そこら辺を中略すると、「町で発生している連続放火事件って犯人小佐内さんじゃね? やりかねないだろあの女」というあたりで上巻が引いて下巻に到るのですが(これは知っても興を殺がない)、普通に考えて小佐内さんが犯人であるはずもなく、一方で小佐内さんが無関係であるはずもなく、そうすると(ミステリ的に)結論としてありうるラインというのは殆ど選択の余地がなく、という点でミステリ的には、えーと、詰まらないとは云わないまでも意外性はなかったかなと。
でミステリではなくラノベ(キャラ小説)的にどうかというと、これは素晴らしいの一言で。
単発モノじゃなくて「春季」「夏季」を経ているという前提もあって、小佐内さんの雌ネコっぷりが「もうね!!」って感じです。
そう思わない人は多分シリーズ一作目で投げてるのでw、夏季まで読んで続きが気になってる人はまず間違いなく満足するでしょう。
……しっかしアレですね、酷い女 ですねw

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
著者/訳者:米澤 穂信
出版社:東京創元社( 2009-02 )
定価:¥ 609
Amazon価格:¥ 609
文庫 ( 254 ページ )
ISBN-10 : 4488451055
ISBN-13 : 9784488451059

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
著者/訳者:米澤 穂信
出版社:東京創元社( 2009-03-05 )
定価:¥ 609
Amazon価格:¥ 609
文庫 ( 242 ページ )
ISBN-10 : 4488451063
ISBN-13 : 9784488451066

オビです。
……ええ、そんなん。
真っ黒w
つい最近別件で「連作短編集」について触れましたが、(これは興を殺がないと判断して書いてしまいますが、)本作は「連作」であって「連作短編集」ではありません。
以上おことわり。
・身内に不幸がありまして
・北の館の罪人
・山荘秘聞
・玉野五十鈴の誉れ
・儚い羊たちの晩餐
の5編を収録。
概ね「凋落の傾向のあるハイソな家柄」の人が中心になりますが、「連作」の「連作」たる所以はそこではありません。
作中ではあまり表に出てきませんが、「バベルの会」なる大学の読書サークルがキーワード。
ハイソな家柄の方々が通う大学なのでイメージ的には学習院みたいなものかと思われますが、大学についてはほぼ全く情報がないので詳細は不明です。
いくつかの話では主人公自身がサークルに所属しますが、別の話ではチョイ役気味に登場した人物からそのサークルの噂話を耳にするだけだったり、……要するにメインではありません。
コロンボのかみさんみたいなもん、と云えばOK? あるいはマクガフィン。(解説必要? マクガフィン)
……ここまで書いたところで、この先を書けないことに気付きましたよ?w
えーと、「バベルの会」は確かにマクガフィン(的なもの)ですが、他方明確な「役割」も持っていて、でそれが最後の作品で語られるため、今ここではちょっと触れられないのですよね。
(じゃあマクガフィンじゃないじゃん、というならそのとおり)
「ラスト一行の衝撃にこだわり抜いた」というだけあって、中々綺麗な「一行」で締めてくれます。
中でも個人的に(ダントツで)一番ツボったのは「玉野五十鈴の誉れ」。「うわw」って声出ちゃいましたよ。
「あれが伏線かーーーーーー!!」と。
黒い黒い。
ま、そうですね、「ボトルネック」「犬はどこだ」あたりの黒米澤が好きなら多分OKです。
戦闘メイドも出るよ!!(山荘秘聞)

儚い羊たちの祝宴
著者/訳者:米澤 穂信
出版社:新潮社( 2008-11 )
定価:¥ 1,470
Amazon価格:¥ 1,470
単行本 ( 253 ページ )
ISBN-10 : 4103014725
ISBN-13 : 9784103014720
最近のコメント