[単行本] 西澤保彦 ≫ 身代わり

 待ったぜ!!
 前作から9年経っての続編です。
(作中では一ヶ月あるいはもうちょっと、ぐらいしか経ってない。……随分年下になっちゃったなぁおい)

 ボアン先輩がいつものように手近な学生を捕まえて飲み明かしていたその翌日、参加者の一人が刺されて死んだ。「あいつに一体何が」と驚くボアン先輩。
 一方、タックとタカチは「麦酒の家」に引っ込んでいたが、高校時代の友人の訃報(※上記の学生とは別人)の訃報を受けて、その葬式に参列していた。
 相互に無関係に発生した二つの事件、……の筈が、意外な展開を見せていき……。

 というのがミステリ的な構成。
(作中の描写順序とは変えてますよ)


 前作が、(シリーズキャラクターであるタック&タカチを中心に見た際に)超強烈な印象を残して終わっただけに(そこら辺についての話)、「あの後でどう続くの?」って感じでしたが、「まぁそんな感じかな」という感じで、違和感は無かったです。
 逆にもっと彼ら中心の、ともすればキャラクター小説っぽい内容であっても良かった──あるいはそれが期待されていた──のかも知れませんが、そうすると初見の人置き去りになっちゃう訳で、「まぁこんなもんでしょう」と。

 元々このシリーズ、「机上の空論を転がして転がして転がしていたらあれあれ」みたいな話が中心なので、そういう点での違和感はないです。突拍子もない推理が「……いや、でもひょっとしたら?」と次の展開に繋がっていく様は、リアリティとかは別にしてある種の楽しさがあるのは確か。ここら辺、流石に巧い。

 他方、(恋愛について)「相手を支配しようとすることの醜悪さ」みたいなシリーズ共通テーマも直球で貫かれておりw、この意味でもシリーズ読者に違和感はないでしょう。

 9年ぶりにしてはネタが小さいとか関係が進んでないとか、そういう不満はないことも無いですが、元気な「彼ら」と再会できたのでとりあえずは良いかな、というのが正直なところ。
 また、年イチぐらいで続編が読めれば良いなぁ、なんて思います。


 シリーズ未読の人は、この機に是非頭っから読んでみてください。(本作以外は全て文庫で出ています。細かい話は前述の「以前の記事」参照。)
 シリーズキャラクターがこんだけ(メンタル的に)しんどい目にあう作品は、そうザラにないですマジで。

身代わり

著者/訳者:西澤 保彦

出版社:幻冬舎( 2009-09 )

定価:¥ 1,470

ハードカバー ( 310 ページ )

ISBN-10 : 4344017269

ISBN-13 : 9784344017269


西澤保彦(タック&タカチシリーズ)の話。

 タック&タカチシリーズは非常に屈折した・泥臭い恋愛モノだよなぁ、と。
 うん、体裁としてはミステリなんだけど、このシリーズを高く評価する人は多分ミステリとして読んではいないと思う。

  • 彼女が死んだ夜(’96) 2年生・夏の事件
  • 麦酒の家の冒険(’96) 2年生・夏の事件 慰安旅行
  • 仔羊たちの聖夜(’97) 2年生・冬+1年生・冬の事件
  • スコッチ・ゲーム(’98) 回想1
  • 依存(’00) 回想2

(作中の時系列と刊行順・年)

「彼女が死んだ夜」については「普通の長編推理小説」だと思っておいてとりあえず問題ないです。
 タック・タカチ・ボアン先輩・ウサコの4人組もこの時点で登場。
 自己中心的な振る舞いで犯罪を犯す人、それに振り回される人、という題材はこの時点から現れていますが、「タックとタカチのお話」という臭いはまだしません

「麦酒の家の冒険」は、前作で仲間を喪った痛みから立ち直るために、と企画された小旅行が舞台。
 舞台設定の突飛さは群を抜いていますが、「タックとタカチのお話」という観点ではぶっちゃけ読まなくても大差ないですかね。
 あと読んでるとビールとツマミが欲しくなりますかね。

「仔羊たちの聖夜」は例の4人組の出会いのエピソードが語られます。
 また、事件解決への動きの中で、「タックとタカチがコンビを組んで」「タカチが先頭に立って」調査して回るシーンがあるのですが、その場面を通じて「タカチが何を憎んでいるのか・何と戦っているのか」が明らかになります。
 ……「明らかになる」は嘘ですかね、「執拗に描かれます」。
 それまで比較的「冷静沈着」だっただけに、「何にそんなに執着するの?」という点は興味深く読めるのではないでしょうか。

「スコッチ・ゲーム」はタカチの「過去の事件」の回想と解決の話。9割方タカチで1割タック、ボアン先輩とウサコは出てきません。
 タカチは「他人を容易に近づけない雰囲気を持った人」として描かれていますが、「なぜそうなったのか」が語られます。(あと女子寮と百合も出てきます)
 ぶっちゃけるとタカチと父親の確執の話で時期的には「お前エヴァ見ただろ」な感じでしょうか。

「依存」は「スコッチ・ゲーム」の返歌です。
 前作は「タカチの過去の因縁をタックが断ち切る」話でしたが、今回は「タックの過去の因縁にタカチが向き合う」話。
 配役が逆になったところで予想が付くかもしれませんが、タックと母親の確執の話となります。
 ただし、構成の工夫によって「自己中心的に振舞う幼稚な人」の話が短編集のように繰り返し語られ、メインの話のインパクトを倍化させている、という点は特筆に価します。
 繰り返し語られる「自己中心的に振舞う幼稚な人」の話のトリとして、今回の「ラスボス」が登場するわけですが、話の流れでこの「ラスボス」が無茶苦茶強そうに見えるので、そのラスボスを更に圧倒する我らがタカチの男前っぷりったるや素晴らしいの一言
 あともしこんな風景が眼前で展開されたら俺は泣く。

 以下、前の記事からの流れを受けて。

 シリーズで繰り返し繰り返し語られるのは「一方的で都合のいい、思い込みと愛情の押し付け」、「それに起因するディスコミュニケーション」です。
 その根底には「『わたしはあなたを理解している』という誤解」があります。
「あなたは嫌がるけど本当は○○するべきです。いいから黙ってわたしのいうことを聞きなさい」みたいな図式ね。

 それらは非常に「醜悪なもの」として描かれるので、依存のラスト、(軽くネタを割るので注釈1 )の二人の姿がちょっと神々しくさえ見えます。
 この点については幻冬舎文庫の解説が凄く良いので引用。

(略)
 それは例えるならば、探偵小説、青春小説、教養小説、恋愛小説、それら全ての要素が一体となり奏でられる、美しくも哀しき調べの倒錯したロンド。そこでは、「愛情と束縛」という主題が、特に低く弱く、時に高く強く、繰り返し繰り返し鳴り響く。そしてクライマックス、二つの独奏楽器が、互いにうち消しあうように烈しく鳴り響いた後に訪れる静寂。ミステリ至上屈指の、美しくも切ない幕切れに、読者は思わず溜息をもらしてしまうことだろう。安心、満足、寂寥。それらがない交ぜとなった溜息を。

 うん、本当に溜息ですねこのラスト。
「こういうハッピーエンドもあるんだなぁ」と。(いえ全然終わってはいないのですが)

 この辺から数えて一週間ぐらいぶっ飛びましたが本望です。

彼女が死んだ夜 (幻冬舎文庫)

著者/訳者:西澤 保彦

出版社:幻冬舎( 2008-06 )

定価:¥ 680

Amazon価格:¥ 680

文庫 ( 366 ページ )

ISBN-10 : 4344411447

ISBN-13 : 9784344411449


仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)

著者/訳者:西澤 保彦

出版社:幻冬舎( 2008-10-10 )

定価:¥ 720

Amazon価格:¥ 720

文庫 ( 419 ページ )

ISBN-10 : 4344412125

ISBN-13 : 9784344412125


 入り口にするならこのどちらかだと思うのでそんな感じで。
依存だけ読むとか愚の骨頂なので絶対ダメです

  1. 「どちらかがどちらかを管理するのではなく、どちらも相手に依存する」ような関係 []

[単行本] 西澤保彦 ≫ 黒の貴婦人

西澤ファンの掲示板 被ブックマーク件数
http://bbs6.sekkaku.net/bbs/2438.html

[1489] 題名:自分にプレッシャーをかける(汗) 名前:西澤保彦 MAIL URL 投稿日:2008年08月29日 (金) 09時07分

(引用者略)

光文社からの書き下ろし長編、『スナッチ』が一段落(といっても、まだまだ再校作業がありますが)
したので、次の書き下ろし長編に着手しました。
幻冬舎です。タック&タカチシリーズの新作です。
時代設定は『依存』の直後、同じ年の8月に起きた事件からスタート。
とはいえ、すっかり勘が鈍っていて、ほんとに書けるかどうか不安。
まだほんの少し、書き始めたばかりなので、あんまり公言すべきじゃないかもしれませんが、
やっぱり、ここらで自分にプレッシャーをかけておかないと(汗)。
目標は年内完成。
がんばりますです。

(固定リンクは無い)

 というのを見て「依存」の後ってどうなってんだっけって思ってwikipedia見てみたら短編集2冊出てるのを今更知って読んだ。(2冊とも)
 面白かった。

 ……えええ何その味もそっけも無いのw

 このシリーズは俺が高校生?大学生の頃に出ていた奴で(細かい話は先のwikipedia参照)、俺の年齢のちょっと上からほぼ同年代ぐらいの面々がメインで回ってたんで、1) その辺の距離感の近さと 2) ミステリ的な切れ味の良さと 3) キャラの軽さ≒読み易さあたりが良かったなーとか思い出してました。

 ……まぁ、そういう「軽くて読み易い本格ミステリ」としてサクサク読み進めた結果として「依存」で轟沈するのですがw
 文庫で読んでたから、……それでも2003年だ。5年前。
 読んだことない人にはね、レイニー止め5年だと思ってもらえれば。バラモス倒してアリアハン帰ってきてゾーマの声が響いて5年、でも良いです。(話が引いている訳ではないが、明らかに「新たな展開」が始まることを予感させておいて始まらないというw)
 あのドロドロした内容で5年だもんなー、長かったなー。(もう具体的な内容は全然覚えてない。ドロドロしてたことしか覚えてないw

 新作楽しみです。
(これ何の記事?)

■以下はこれから読もうって人向け
(タック&タカチシリーズは「統一されたレーベル」がありません。レーベルが揃わないことに違和感を覚えるかもしれませんが、それで正常です)

西澤保彦・7杯目死んだ男 被ブックマーク件数
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1205337044/526-530n

526 :名無しのオプ:2008/09/05(金) 03:53:26 ID:oyEiUxZ0
西澤初心者です。
麦酒が面白かったので依存読んでみた。
投げそうだった。ていうかミステリなのこれ?
次は七回読んでみる。

527 :名無しのオプ:2008/09/05(金) 06:35:29 ID:/yS7xPqP
ものには順番というものがあるのだよ。

528 :名無しのオプ:2008/09/05(金) 17:30:54 ID:O801aZfp
>>526
それはシリーズもので最低限「彼女が死んだ夜」「仔羊たちの聖夜」「スコッチ・ゲーム」を
読んでからじゃないと楽しめない作品なので・・・

何回このレスしただろうorz
そろそろテンプレに書いてもいいころだと思う。

529 :名無しのオプ:2008/09/05(金) 18:00:28 ID:IyFYnQRq
フレンチやイタリアンのコースを食べに行って、最初にデザートや
食後のクッキーと珈琲が出されるようなもの。

日本料理だと、お茶漬けやご飯と漬物を出されるようなもん。

530 :名無しのオプ:2008/09/05(金) 18:12:18 ID:PKEi6Lma
そりゃもう帰れってことかよw

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

著者/訳者:西澤 保彦

出版社:幻冬舎( 2005-10 )

定価:¥ 630

Amazon価格:¥ 630

文庫 ( 356 ページ )

ISBN-10 : 4344407091

ISBN-13 : 9784344407091


[単行本] 西澤保彦 ≫ 収穫祭

 無茶苦茶。
(必ずしもネガティブな意味ではない、というかパワーだけは物凄い)

 小説の全体像としては全25年の大河モノって感じなのですが、とりあえず25年前に過疎の村全滅の15人殺しがありーの、その9年?13年後に掛けて関連する別件の延べ13人(ぐらい)殺しがありーので、最早ギャグのような勢いの殺しっぷり。
 いや別に死にすぎだからギャグだとか、あるいはダメだとかいう訳ではないのだけど。

 長期間とか死にすぎとかは実は付帯条件で、「長期間」「死にすぎ」であるが故に(トラウマによる)記憶の改竄が乱れ飛んでいるのが一番「無茶苦茶」な点。(あと出てくる人たちが発情しすぎなのも無茶苦茶なんだけど、これは/これも西澤作品の一つのテーマだからなぁ)

 伏線キッチリ張ってある等々、形式的には(強調)非常にオーソドックスなミステリなのですが、全体のテイストが上記のように無茶苦茶だし謎解き面でも消去法的にそれしかないしで、本格テイストの作品ではないですね。
 というか4章の終わり方(5章はカットバックするので時系列的には最後)が黒すぎ&怖すぎ。その方向のカタルシスはどうなのw

 ……しかしまぁ、事実上日・月・水の3日で2000枚級の作品を読んでしまったわけで、とりあえず堪能した、とは書いておきましょ。(というか消化ページ数としては水曜が350/600なんだけどw)

収穫祭

著者/訳者:西澤 保彦

出版社:幻冬舎( 2007-07 )

定価:¥ 2,100

Amazon価格:¥ 2,100

単行本 ( 605 ページ )

ISBN-10 : 4344013484

ISBN-13 : 9784344013483


作者インデックス

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